【子どもが変わる言葉かけ】家庭でも試したい、教師が実践している子どもとの関わり方

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【子どもが変わる言葉かけ】家庭でも試したい、教師が実践している子どもとの関わり方

若手教師が特に困ることの多い学校現場の「あるある」事例を取り上げ、その原因と対応例をわかりやすく整理した『ほんの少し変えるだけでうまくいく 学級経営・学級づくりQ&A』(Gakken)。

子どもへの関わり方を少し変えれば状況が好転する声かけなどは、日々家庭で子育てに取り組んでいる保護者の方々にとっても参考になる内容です。

どのような視点で子どもの行動をとらえ、また子どもとの関わり方をどう変えていくのかー「家庭でも試してみたい」と思える実践のヒントが詰まった一冊です。

※『ほんの少し変えるだけでうまくいく 学級経営・学級づくりQ&A』(Gakken)より、一部内容を抜粋してご紹介します。

目次

「やりたくない」と言う子

やる気がない

子どもが「やる気がないからやらない」と言うとき、その多くは、感情と行動を分けてとらえられていない場合が多いのではないでしょうか。

子どもは、内面の不安定さや感情の高まりをそのまま行動の理由にしてしまう傾向があります。一方、教師側も「子どもの気持ちを変えれば行動は変わる」と無意識に考えがちです。そのため、子どもの感情を変えようと説得したり、逆に感情に寄り添いすぎて行動を後回しにしたりします。

しかし感情は人から言われて変えられるものではありません。変えられるのは行動です。感情の是非を争うと対立が深まりますが、行動は選択肢があると変えられます。

教師が意識したいことは次の3つです。

  • 感情を否定せず受け止める
  • 感情と行動を切り分けて語る
  • 「今できる行動は何か」を具体化する

対応例1.感情を受け止め「やりたくなくてもできそうなこと」を聞く

子どもに「やりたくない」「無理」と言われたとき、教師はその感情を否定せずに「そう思うんだね」と受け止めます。ただし共感だけで終わらせず、「やりたくないけど今できることは何かな?」と続けましょう。

ポイントは、子どもの感情を変えようとしないことです。感情を変えようとすると対立してしまいますが、行動に目を向けると前に進めます。

また、「気持ちが落ち着いたらやろう」と条件をつけると、子どもは動けません。まずは小さくても動けた経験をつくることが大切です。

動けた経験を重ねることで、「嫌でも動けた自分」という実感が育ちます。重要なのは 、「感情はすぐには変えられないが、行動は選べる」という考え方を共有することです。
この枠組みを繰り返すことで、子どもは気持ちに支配される人から、気持ちを抱えながら動ける人へと変わります。

説得よりも行動の選び方を教えて、自分で選べるようにします。自分で選んだ行動に責任をもつ経験が、自律につながります。

対応例2.「最後まで」ではなく「今できる一歩」を具体化する

「最後までやろうね!」では、子どもは動きません。「ノートを開く」「最初の1問だけ解く」「前を向いて座る」など、行動を細分化しましょう。

例えば、「今、できそうなのはどこ?」「30秒だけやるとしたら?」など、行動を小さく、またハードルを下げるほど、実行可能性は上がります。

ここで大切なのは、成功の基準を教師側が勝手に引き上げないことです。小さな一歩を踏み出せたら、すかさず「できたね」と伝えましょう。人は動き出すと、次の一歩も出やすくなります。一歩が踏み出せると、「やれる自分」の感覚(自己効力感)が生まれます。

やる気が出たから動くのではありません。動いたから、やる気があとからついてくるのです。子どものやる気を待つのではなく、動ける形を用意しましょう。それが子どもの行動を変える近道です。

対応例3.「できた事実」を短く言語化する

子どもが動けた瞬間を見逃さないようにしましょう。

「やりたくなかったけどノートは開けたね」「前を向いて座れたね」と声をかけます。評価語は必要ありません。事実だけを伝えれば十分です。
ここで「えらいね」と言うより、「ノートは開けた」と具体的な事実を共有するほうが行動の学習になります。

このような言語化が、「気持ちと行動は別に扱える」という学習になります。
さらに「自分でどうやったからできたと思う?」と一言添えれば、子どもは自分で条件を考え始めます。できた理由を自分の言葉で確認する「成功の責任追及」が再現性を高めます。

感情と行動を分ける経験を積むことで、子どもは感情に振り回されるのではなく、感情を抱えながら行動を選択できる人へと変わります。

教師が叱る回数を減らす近道は、できた瞬間を具体的に拾うことです。その積み重ねが行動の安定をつくります。

やる気がない・すぐに飽きる子

子どもは具体性と自己選択の感覚がある言葉で動きます。抽象的な指示は認知の負荷を高め、子どもは「何をどこまでやればよいのか」がわからず不安になります。不安は行動を止めてしまいます。

また、命令や否定は一時的に子どもを動かしても、主体性は育ちません。さらに、強制的な言葉や否定的な注意は抵抗感や萎縮を招き、やる気をそいでしまいます。

教師は効率を求めるあまり、結論や方法を先に言ってしまいがちです。しかし、言葉を工夫し、具体性・挑戦性・遊び心を組み合わせることで、子どもは自ら考えて行動するようになります。やる気は押しつけるものではなく、言葉の工夫によって引き出され、できた実感の積み重ねが自信と主体性を育てていきます。

教師が子どもの心の動きや興味を意識して言葉をかけることが重要です。言葉かけを変えるだけで、子どもの行動と主体性は大きく変わります。

対応例1.「何を・どれくらい」を示して行動を引き出す言葉かけ

ただ「掃除しなさい」「片づけなさい」と指示するだけでは、子どもは何をどれくらいすればいいのか迷いがちです。

そこで「1分で机の周りのごみをいくつ拾えるかな?」と、時間や量(数)を具体的に示した言葉かけをしてみましょう。「20個!」と子どもが答えたら、「じゃあやってみよう」と続けるだけで目標が明確になり、集中して行動できます。

授業中のプリント整理や教科道具の片づけ、体育準備など、さまざまな場面で応用可能です。

「何を・どれくらい・いつまでに」を示すことで、子どもは迷わず動き出します。具体的な目標は達成感を生み、小さな成功体験となって次の意欲へとつながります。

対応例2.誰もが挑戦したくなる前向きな言葉かけ

子どもが挑戦意欲をもつためには、少し背伸びした課題の提示が効果的です。

「○年生にはちょっと難しいかもしれないけれどやってみる?」と言葉をかけることで、子どもの好奇心と挑戦心が刺激されます。

注意のしかたも工夫すると効果的です。例えば、「給食の準備を早くしないと、昼休みが短くなるよ」といった否定的な伝え方ではなく、「給食の準備を早くすると、昼休みが長くなるね」と前向きに言いかえるだけで、子どもの行動は変わります。

理科の実験準備や体育の道具の片づけ、掃除当番などでも同様です。このように「~しないと困るよ」と行動を制限する伝え方をネガティブルール、「~するとよいことがあるよ」と行動の価値を示す伝え方をポジティブルールといいます。

前向きな言葉かけは子どもに「やってみよう」という気持ちを生み、自己効力感を高めます。

対応例3.活動名を工夫して参加意欲を高める

心に残る言葉や遊び心のある表現は、子どものやる気を引き出します。

活動を「○○大作戦」「○○ミッション」などの名前にするだけで、子どもはゲーム感覚で主体的に取り組むようになります。

例えば、掃除や整理整頓、班活動や係の仕事を「掃除大作戦」などと名づけると、自然と参加意欲が高まります。理科や社会科では「○○博士」、地域学習では「○○観光大使」、卒業式は「伝説の卒業式」なども効果的です。

さらに、活動の最後に「ミッション達成!」「みんなのおかげで成功したね」と振り返る時間を設けることで、達成感と仲間意識が一層高まります。
言葉を少し工夫するだけで、子どもたちは楽しみながら主体的に行動し、成功体験を共有することができます。

こうした積み重ねが自己効力感を育て、教室全体の前向きな雰囲気づくりにつながります。

人とうまく関われない子

教室で一人

対人トラブルが繰り返されると、教師はつい当人の性格や態度の問題としてとらえてしまいます。しかし、対話のしかたや合意形成の進め方は、生まれつき備わっているものではなく、多くは経験の中で身につける社会的スキルです。

自分の意見は主張できても、相手の話を最後まで聞く、違う意見を受け止める、折り合いをつける、といった具体的な手順を学ぶ機会が十分でなかった場合、「強く言えば通る」という誤学習が起きることがあります。注意や叱責だけでは、その学習構造は変わりません。

教師が意識したいことは次の3つです。

  • 行動を性格と結びつけない
  • 適切な関わり方をスキルとしてとらえる
  • できないのではなく、まだ学んでいない(未学習)と考える

困った行動の奥には、まだ教わっていない力が隠れている。その視点が、支援の出発点になります。

対応例1.「叱る」より、適切な行動を具体的に教える

子どもが友達の話を遮った場面で、「何回言えばわかるの!」と感情的に怒っても、行動は変わりません。

叱ることは、してよいこと・いけないことを伝えるために必要な場面もありますが、叱るだけではどうすればよいかを学べません。そこで、最後まで聞くのは具体的にどうすることかを、子どもといっしょに確認していきましょう。

例えば、「相手が話し終わるまで口を挟まない」「目線を向ける」「うなずく」 などの具体的な行動レベルにすると、行動が目に見える形になります。

また、「順番を待つ」「使った物を元に戻す」など、ルールを守る行動も同じです。抽象的な注意より、具体的な行動として教えることが近道です。

社会的スキルは抽象的な言葉ではなく、ロールプレイを用いて、実際の動きとして教えることが重要です。そこで初めて、対話が続く関わりのポイントは、性格ではなくスキルだと伝わります。

対応例2.「できる形」に分けて、練習で身につける

一度伝えただけで身につくことは多くないため、行動を小さく分けて練習しましょう。
例えば、「相手が話し終えるまで3秒待つ」「意見を言う前に『私は』から始める」などの具体的な型を示します。

二人一組で短いロールプレイを行い、できた瞬間をすぐにフィードバックします。そのときは「今、最後まで待てたね」「言い方がやわらかくなったね」と事実を伝えましょう。

叱責よりも成功体験の積み重ねが子どもの行動を安定させます。順番を守れない子どもには「前の人が終わったら動く」、ルールを破りやすい子どもには「始める前に確認する」など、同じように小さな型に分けて練習できます。

スキルは意思ではなく、練習によって身につくものです。

対応例3.「性格」ではなく「未学習」「誤学習」として学び直す

子どもがすぐに変わらなくても、「やっぱり性格だからしかたない」と結論づけないことです。対人行動は長い経験の中で形づくられています。だからこそ、未学習ならば新たに学び、誤学習ならば時間がかかっても学び直しをすればよいわけです。

グループ活動で少しでも相手の話を聞けた場面があれば、「今、最後まで聞けていたね」と具体的な行動を言葉にして、さらに「どうしたら今みたいにできた?」と子どもに問いかければ、本人の中で行動と結果が結びつきます。

順番を守れた、ルールを守って参加できた、といった小さな変化も同じように見逃さず言葉にしましょう。できた経験の積み重ねが、次の行動を育てます。

怒る、叱るで終わらせず、教えて練習し、できた行動をすかさず認めて、増やしていきましょう。この循環が回り始めると、困った行動は性格のせいではなく、「学習の途中」というように見え方が変わります。

ほんの少し変えるだけでうまくいく 学級経営・学級づくりQ&A 「あるある」事例62

鹿嶋真弓(編・著)吉本恭子(編・著)
定価 2,420円 (税込)

【目次】

■第1章 注意・説諭
何度言ってもわからない子/「いつも、みんなが~」と訴える子/人の話をちゃんと聞けない子/「やりたくない」と言う子/いつも遅刻する子/同じ失敗を繰り返す子/言われたことさえ気づかない子

■第2章 授業構成・授業規律
一問一答で対話の深まらない授業/課題を出しても取り組めない子/アクティブラーニングをしているのに深まらない授業/班活動後いつも決まった子が発表する授業/子ども間のささいなトラブルで度々ストップしてしまう授業/机間指導をしているつもりが散歩のようになる先生/丸つけができない子/宿題に意欲的に取り組ませたい先生/小テストが学びにつながらない子/コメントがみんな同じになってしまう先生

■第3章 グループ活動
冷めた感じのクラス/席替えのたびにもめるクラス/班長がなかなか決まらないクラス/SGEの活動が日常に反映されないクラス/SGEの活動中にトラブルが起こるクラス/自分の気持ちを言えない子のいるクラス/グループでの話し合いが成立しないクラス/予想外の発言をする子どもがいるクラス/SGEの活動をしても関係が深まらないクラ/リーダーがいないクラス/言われたことしかしないクラス/3月になっても所属意識の低いクラス

■第4章 動機づけ・承認・強化
ほめてもよい行動が続かない子/「できない」とやる気をなくす子/課題に取り組もうとしない子/やる気がない・すぐに飽きる子/帰りの会でする話が連絡事項だけの先生/忙しくて子どもと関わる時間がない先生/教育相談をやりっぱなしにしてしまう先生/毎日かかさず子ども全員と話したい先生

■第5章 考える授業
正解を早く知りたがる子/自分の考えを見直せない子/考えが深まらない授業/意見は出るのに考えが広がらない授業/授業で育てた見方が日常で使えない子/自分で思考を深めていけない子

■第6章 個別対応
立ち歩きが止まらない子/突然切れて、周りの人や物に八つ当たりする子/人とうまく関われない子/注意しても私語が止まらない子/提出物がなかなか出せない子

■第7章 多様な困難への対応
不登校の子の保護者を支えたい先生/会えない不登校の子/お休みが気になる子/進路が心配な不登校の子/COLUMN1 不登校の子どもたちが語る居場所とは/いじめを訴えてくる子/COLUMN2 いじめ対応の原則/「いじめ」とは言い難い行為を「いじめ」と訴える子/いじめを早期に発見したい先生/かけ声だけのいじめのない学級/COLUMN3 いじめ重大事態から学んだこと/意図せず、いじめの芽をつくってしまう先生/保護者に叩かれたと言う子/虐待に早く気づける先生/「家に帰りたくない」と言う子/一時保護が解除になった子/毎日家族の世話をしている子

■第8章 知っておきたい理論・用語
応用行動分析/解決志向ブリーフセラピー(SFBT)/ブリーフミーティング/構成的グループエンカウンター(SGE)/ひらめき体験教室/知っておきたい用語一覧

■第9章 先生のメタ認知力向上のためのチェックシート
自分の「行動」のくせを知る/自分の「感情」のくせを知る/自分の「見方」のくせを知る

この記事の監修・執筆者

鹿嶋真弓・吉本恭子

鹿嶋真弓

筑波大学大学院教育研究科カウンセリング専攻修士課程修了。同大学院人間総合科学研究科生涯発達科学専攻博士後期課程修了。博士(カウンセリング科学)。都内公立中学校教諭、逗子市教育研究所所長、高知大学教育学部准教授・教職大学院教授を経て、2019年より立正大学心理学部特任教授、2022年より同教授。2016年9月、TILA教育研究所を設立。

吉本恭子

高知県内で養護教諭として勤務。高知市教育研究所教育相談班指導主事・班長、高知市立西部中学校教頭、高知市立城西中学校校長、高知市教育研究所教育支援センター長を経て、2025年より高知市こども未来部子ども家庭支援センターでヤングケアラーコーディネーターとして勤務。2016年9月、TILA教育研究所を設立。

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